体の状態は常に動いている
西洋医学の「恒常性」に対して、東洋医学では、「健康」とは、目に見えないが、体の状態が「常に動いている」と考えます。同じように見えても、体の中では絶えず何かが動いており、動いているものの流れがスムーズなときは健康で、流れに異常ができて、滞ったり、つまったりすると病気が生じると考えています。
気の働きがスムーズな動きを作り出す
東洋医学には「気」という考え方があります。「気は“見えずして動きあるのみ”といわれ、生命エネルギーの源とされています。また一方で“気行けば血行く”といわれ、血液などが体の中をスムーズに流れることができるのは、この「気」のおかげだと考えています。
例えば、同じ姿勢で長い時間じっとしていると、体がむずむずしてきたり、肩や腰が凝ったりしますが、これは、体を動かしてて気の流れをスムーズにしようとする、体からのサインなのです。
楽しい気持ちが体を健康にする
「気」は体だけでなく精神状態とも大きな関連があります。くよくよしたり、落ち込んだり、極度に緊張していると「気」の流れは滞ってしまいます。これを「気滞」といいますが、「気」が停滞すると、体に影響を及ぼして異常が生じ、凝り、痛み、神経性胃炎などの多くの症状を引き起こします。ですから、気持ちを明るく保ち、のびのびと過ごすことが、体を健やかに保つことにつながるのです。
ストレスの多い生活は「気滞」を生みやすくします。「健康」によいとされる運動も、健康のためという義務感だけでするのでは、義務感がストレスになり、健康にはかえってマイナスです。それよりは、リラックスした気持ちで生活するほうが、ずっと健康にプラスになります。
「常に変化している」から「いつも同じ状態でいられる」
東洋医学の「常に動いていること」が健康だという考え方と、西洋医学の「恒常的なこと」が健康だとする考え方は、まったく反対のように見えますが、そうではありません。
人間の体は、天候や住んでいる環境、食べ物、仕事の内容や人間関係など、さまざまなものの影響を受けています。しかし、天候が変わったからといって、普通は体の不調を感じるわけではありません。なぜなら、生物には熱くなれば冷やし、乾けば潤すというような、体の状態を一定に保とうとする働きが備わっているからです。しかし、この働きは意識しててきるものではありません。環境の変化に応じて、自動的に調整されているものですから、私たちは意識せずに、いつも同じ状態でいることができるのです。
西洋医学の「いつも同じ状態」は、「常に変化している」体の働きによってバランスが保たれた結果なのです。ですから、東洋医学と西洋医学の考え方は、ある面では同質なものだともいえます。
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